鳥海修の文字塾 第2回(2013-11-24)についてのメモ書き(前説編)。
10月から12月まで3ヵ月連続で、字游工房・鳥海 修さんの文字塾が開催されています。
主催は「大阪DTPの勉強部屋」。大阪DTPってくらいですので、大阪で開催されているわけですね。近い! やったー!
鳥海 修さんは、ヒラギノ、游明朝体、游ゴシック体など数十種類の書体製作に関わっている書体設計士さん。
ヒラギノ明朝、ヒラギノ角ゴシックなどのヒラギノシリーズは、Mac OS XやiPhoneに標準搭載され、游明朝体や游ゴシック体は、Windows 8.1やOS X Mavericksに、ほぼ時を同じくしてバンドルされています。
また、京都の精華大学、金沢の金沢美術工芸大学などで講義をされたりもしています。
そんな鳥海さんの文字塾の第2回目が、11月24日に開催されました。
今回のテーマは「活字のコンセプト」。これまで鳥海さんが手がけた大日本スクリーン製造のヒラギノ、字游工房の游明朝体や游ゴシック体、㈱キャップスのオリジナル仮名書体について、そのコンセプトやデザインの考え方が語られました。
というわけで、以前、第1回もレポート……というかメモ書きをお届けしましたが、引き続いて第2回にも参加してきましたので、そのレポート……というかメモ書きを、前回と同じく、鳥海さんの言葉を中心にお届けします。
●前説。
10人ほど遅刻される方がいるということで、10分押しで始めることに。
前回もそうでしたが、その間を利用して(?)、鳥海さんの前説……というか、雑談コーナーが展開されました。
これがまたおもしろかったのです。書体には関係ないんだけど、まずはこちらをお楽しみいただければと思います。
「金沢から帰ってきたばっかりで疲れちゃってるので、いろいろ抜けがあるかもしれません(笑)。
わからないことがあったら遠慮なく聞いてください」
ということで、今回の前説というか雑談は、金沢のお話が中心になりました。
●学生さんの話
「大阪の人は金沢にはよく行くんでしょうかね? いいとこですねぇ。
金沢美術工芸大学ってところで授業やってくれってことで、初めて行ったんですけど、学生の質がいいですね。落ち着いてて。
あのー、(京都の)精華大学ってところでもやってるんですけど……精華大の人っている?
精華大の連中、来ないんだよぉ(笑)。大阪でやるのにぃ。
ダライ・ラマが来るとか言ってね。ダライ・ラマと俺のどっちが大事なんだよぉ……やっぱりダライ・ラマなんだって(笑)」
「金沢のホテルの人も言ってたんだけど、美術大学の学生さんはおとなしいって。なんかね、平均化してるって言ってました。
そういう意味では、京都の飲み屋のおばさんなんかは、精華大の学生さんはちょっとハチャメチャなところがあるって。授業には来ないしー(笑)。
どっちがいいのかわからないけど、書体をやるには金沢美術工芸大学のほうがいいのかもしれませんね」
「精華の学生さん、今書体作ってるんですけど、おもしろいですよー。
『あ』という文字にどんどんどんどん枝葉をつけてね、それがデッサンとかじゃなくて、いきなり描いていくんです。それをアウトライン化するのに、ものすごい苦労してるんですけど。
1文字だけしかできてないけど、とりあえずフォントにできるかどうか見てみようとしたら、できなかったですねぇ(笑)。
アウトライン作るとき、アンカーポイントっていう点で構成していくんだけど、その数がひとつの文字に対して1000を超えるとフォントにならないみたい。だから、どうも途中のどっかで切るとかしないとダメみたいで……。
明日はそれを伝えに行こうと思います(笑)」
●おでんの話
「あと、金沢でよかったのは、金沢おでん。知ってます?
有名なんだって。それでね、安い! 美味い!」
「京都のおでん屋さんに行くと、ひとり5,000円くらいかかる。高い!
美味しいんだけどね、高い! いい感じなんだけどね、高い!
季節によって変わり種もあるんだけど、いろんな種類があって、レタスのおでんなんか美味しいです。
でも、あれは自分でできる(笑)。俺もやってみたんだけど、けっこういつまでもシャキシャキするんですよ」
「でも、金沢のおでんの方が勝ちましたね。
学生を連れてっても怖くないくらいの値段です。
先生は学生から2,000円くらいしか取ってなくて、それで大体間に合うって言ってましたから。
安くって、美味しくって、清潔。
ただ、看板がねぇ、コンビニみたいな安っぽい看板で、どうかなって思ったんだけど、おお、イケるじゃんって感じ」
●金沢の出版社・龜鳴屋
「あと、金沢で『龜鳴屋(かめなくや)』っていう出版社があってね。
これは覚えて帰ってください。すーーっごいいい出版社だから。
●●さんっておじさんが一人でやってるところ。
うちの書体を使ってくれてるってことで、金沢に行ったので突然電話して行ってみたんですけど」
龜鳴屋の方のお名前、聞き取れませんでした。
カツイさんかなーと思うんだけど、あんまり自信ないです。すみません……。
「特装本をいっぱいやられてて、一番びっくりしたのは、室生犀星(むろう・さいせい)の本。
犀星は金沢の人で、その箱入りの本を特装にしてるんですけど、その箱がねぇ……笑っちゃいますよ……竹、ホンモノの竹でできてる。
竹の生垣が犀星の家の周りを囲んでたらしいんだけど、それを聞いて、箱を竹の生垣にしようとしたんだって。
竹垣を紐でずーっと縛るじゃない。それまでちゃんと職人さんに習ってやってるのよ。
ボコボコしてて本棚に入らないっていう(笑)。よくやるなぁって」
「でも、どの本もみんなキレイで。
もらった着物の生地を触ってて気に入ったから本の表紙に使っちゃおうとか。そういうことをやって、すんごい素敵な本を作ってました。
ネットでしか売ってないんですよ。
安い本だと2,000円くらいからあるんだけど、俺が買ったので一番高いのは10,000円弱、木版をやってる人の本なんですけど、それもキレイで。
あとね、蔵書票ってのをちゃんと作ってもらっててね。一冊一冊に固有の蔵書票を用意してて、注文されると必ずそれを自分でちょこちょこ貼って、それで送るっていう」
「いいです、ここは。いいです。すごいキレイな本でした。
あぁ、こんな人いるんだーって思って、もうちょっといい書体作んなきゃってね、帰ってきました」
「……てとこで、10分経ちましたけど(笑)」
と、みごと時間ぴったりに雑談を終えられ、「大阪DTPの勉強部屋」の宮地さんにつないで、文字塾の第2回、スタートです。
というところで、続きは次回。しばらくお待ちくださいまし。